残暑お見舞い申し上げます。
朝夕は幾分しのぎやすくなりましたが、
貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
時節柄、一層のご自愛の程お祈り申し上げます。
さてさて、そんなことはさて置いて本編です。
事務仕事につきものなのがビジネス文書。メールでも書類の送付状でも、事務担当者は常に文章を書き、自分の意図するところが失礼なことなく相手に伝わるよう、日々細心の注意を払って書いています。
とはいえ、単なる書類送付状であれば、定型的な文章が書かれたWord文書のひな型のファイルを開いて、相手先社名だとか日付のみを変えて印刷して発送ということも常態化しています。弊社でも状況は同じで、長年使って来た半ば手垢のついたビジネス文書の書式をコピペして他社さんへの送付状として使いまわしているというのが実情。べつにそれを非難するつもりはありません。コピペ使いまわしは効率化のたまもの。事務担当者が迷わずに送り状作成できるのがベストなわけです。そもそも冒頭の残暑お見舞い文例も検索して出てきた文例ですしね。
さて、今回ですが、このビジネス文書にスポットを当てて、これをいろんな文体に魔改造してみようという趣旨でお送りします。オリジナルの文書はこちら(以下、画像はクリックで拡大します)。
何の変哲もない「書類送付のご案内」文書。これをどう魔改造するというのか。そんな皆様方の心配をよそに、まずは現代日本が誇る大作家であらせられるこのお方風の送付状を見てみましょう。
▼村上春樹風送り状
キーワードは1人称の「僕」。そこから広がる内省的な閉じた世界観。この文章を読むと、セカイには「僕」と「あなた」(ビジネスレターで「あなた」?)の2人しかいないような錯覚に陥ります。あと、ビジネス文書で「やれやれ」というつぶやきや「静かな冬の夜にすするぬるいスープのように」といった比喩表現はビジネスレターにおいてはどう考えてもあり得ない表現であるのが逆に味わい深いです。
お次に昭和の文豪、絶望大先生の送付状です。
▼太宰治風送付状
徹底的な卑屈さ、鬱屈した自己嫌悪感が全編に漂います。タイトルの「人間失格のビジネスレター」で何とかこらえても、冒頭の「恥の多いビジネスライフ」や2段落目の「ああ、なんておぞましい自己主張でしょう!」の表現を見ると、「この人は何を目的に、どういう思いで毎日働いているのだろう」という疑問が脳内の堰を切って流れ出してきます。送付状の簡素な文章のなかにこれでもかと詰まった絶望一色の自己主張。これをビジネスレターでいけしゃあしゃあと書いてくるメンタルというか自己顕示欲は相当に強いのではないのか、ともわたしは思います。
次は時代を現代に変え、とある音楽雑誌風送付状です。
▼○キノン風送付状
音楽雑誌『○OCKIN' ON JAPAN』のロングインタビュー特有の文体での送付状。挨拶文ひとつ送るのにも「世界の終わりと僕らの必然」レベルの覚悟が必要なのですが、これが「初期衝動」によってやすやすと上書きされ、「魂の叫び」として発せられる様はなかなかにすがすがしいです。最終文、「僕たちのアンセム」の具体的な内容が文中からちっとも読み取れないのが秀逸で、自分の「リアル」は声高に叫ぶくせにこのレターを受け取った人の「リアル」、具体的に言い換えるなら「困惑」を何も考慮していないところに乾いた笑いがこみあげて来ます。
音楽繋がりで、今度は熱いHIPHOP魂による送付状です。
▼ラッパー風送付状
まずタイトル。相手先企業を「ストリート」呼ばわりするのはいかがなものか、若干眉をひそめたくなるのですが、本文の怒涛のライミングがすべてその疑問を霧散させてしまいます。「ご高配」と「航海」、「針」と「鎖」など小節の最後で韻を踏んでいる文章構造は、まさしく「声に出して読みたい日本語」そのもの。それだけにとどまらずわたしの脳内ではビート(ラップの伴奏音楽)のブレイクビーツが勝手に流れ出してしまいました。ラスト、アウトロ部分の「Peace.(敬具)」で全人類鳥肌モノのカタルシスが押し寄せます。
ラストはEDMのシンセが鳴り響くパリピ送付状です。(参考音源→こちら)
▼パーリーピーポー風送付状
なんだかおいちゃん元気が出てきた気がする。
バイブスぶち上げで来週も仕事頑張ろう。
うぇーい!(棒読み)






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