僕は『アンパンマン』で建設業コンプラを語る。

 

超有能エンジニア系悪役と地域密着型ヒーローが激突するイメージ図。

▼『アンパンマン期』という発達段階

子どもの成長・発達は乳児期→幼児期→学童期→思春期へと段階的に進みます。そのなかの幼児期において、自立性や自発性、さらには社会性が育っていくというのはよく知られた事実です。それに加えて近年では、「アンパンマン期」という発達段階が存在するという言説もちらほらみられるようになりました。

1~2歳の子どもたちが突如として『アンパンマン』に魅了されるということ。『アンパンマン』の造形が丸を基調としていて子どもたちに親しみやすく、勧善懲悪のストーリーが分かりやすい点が支持されている理由とされています。ともあれ、登場するキャラクターが一つのロールモデルとして幼児期の子どもたちに受容されることで、子どもたちの発達に少なからず寄与しているのは間違いないでしょう。その意味で、『アンパンマン』は単なる子ども向けコンテンツの枠を越えた存在と言えます。


▼ハイスペックな男性像として描かれるばいきんまん

そんな『アンパンマン』で当ブログの中の人が強烈に惹かれるキャラクターがいます。それが物語中の悪役として描かれる「ばいきんまん」です。何故か。彼は超絶ハイスペックなキャラクターであることが物語から容易に読み取れるから、です。具体的に列挙してみましょう。


1)独力ですべて完結する技術力

ばいきんまんは設計図の作成から溶接、板金、プログラミングまで、開発工程のすべてを一人で担える技術力を持っています。Webエンジニアの世界ではこのような技術者を「フルスタックエンジニア」と呼ぶそうですが、この定義から言えば、ばいきんまんこそがフルスタックエンジニアの理想像かつ究極の形ではないかと考えられます。

何より、ばいきんまんがもつ驚異的な開発能力は、柳田理科雄さんの記事(こちら)にもある通り多岐にわたります。記事中で紹介されている発明品は、そのすべてが「もし人類が役立てることができたら」と夢想せずにはいられない性能を誇っています。

そして開発過程に目を移せば、そのすべてが「アンパンマンに敗北→敗因分析→改良された兵器をすぐさま開発・実戦投入する」というPDCAサイクルを経て爆速の納期で開発されているという事実も無視できません。そもそもPDCAサイクルを回し続けることの困難さ、そしてそこに多大な時間や労力が必要であることは、今を生きるビジネスパーソンがいちばんよく知っている事実であります。


2)強靭な肉体と鋼のメンタル

ばいきんまんは生物としては「菌」に過ぎません。しかし宇宙空間や極地といった過酷な環境においても活動できますし、細胞が消し飛ぶレベルのエネルギーと評されるアンパンチの直撃を受けても、次のシーンでは元気に復活するタフネスさを誇っています。一般的な生物の枠を超えたこの身体的能力を表現するうえでは、「強靭」という言葉でさえ不十分なのではないか。私はそう思います。

加えて何百回、何千回と「ばいばいき~ん」と飛ばされても、けして諦めることなく翌日には新しい作戦を実行する。これを鋼のメンタルと呼ばずして何と呼ぶでしょうか。ばいきんまんを「理想の上司」とする言説すらWeb上には存在しますが、冗談で済ませるのはもったいない話である、とわたしは思います。


3)男としての存在感

まず、意思疎通が難しい「かびるんるん」を組織としてまとめ上げ、拠点の「バイキン城」を維持・運用している事実は、ばいきんまんが類まれなるリーダーシップを備えていることの証左といえます。

しかし何より、自由奔放、なおかつ圧倒的な可愛さを誇るドキンちゃんをバイキン城に住まわせていること、さらには事あるごとに連れ歩いているのは皆さんもご存じでしょう。アンパンマンの世界線において、ばいきんまんは「モテ」の象徴であり、凡百の男性よりもはるかに高い「オスとしての魅力」を持ち合わせているのです。

確かにドキンちゃん自身はしょくぱんまんが大好きという事実はあります。それでも前述のようにバイキン城居住という「同棲の事実」及びばいきんまんと「行動を共にしている事実」が存在することで、彼女にとってばいきんまんには抗いがたい魅力があるということが容易に推測されます。


▼ばいきんまんの敗因とコンプライアンス

これまで見てきた通り、ばいきんまんは圧倒的な戦闘能力をもつはずなのです。しかしばいきんまんは常にアンパンマンに敗れ、「ばいばいきーん!」の叫びと共に毎回、星になってしまいます。ばいきんまんが敗れる一因として、当ブログ中の人はそこに「コンプライアンス(法令順守)の意識」を見ます。

具体的には下記のようなばいきんまんの行為が法令違反といえます。


*強盗・窃盗行為:
腹が減れば他人の食べ物を奪い、退屈ならおもちゃを強奪するといった、本能的な略奪行為を常習的に行っています。

*細菌兵器の運用:
部下の「かびるんるん」を増殖させて攻撃に用いることは、現実の世界に照らし合わせれば生物兵器(細菌兵器)の使用に該当し、ハーグ陸戦条約などの国際法に抵触します。

*人質・拉致監禁:
ゲストキャラクターを拉致・監禁し、アンパンマンを誘い出すための盾にする行為は、明確な犯罪行為です。

*不法占拠・器物損壊:
他人の家や町をメカで破壊したり、勝手に占拠して改造したりする行為も頻繁に見られます。

*詐欺・なりすまし:
変装して他人を騙し、仲間割れをさせたりアンパンマンを悪者に仕立て上げる行為は偽計業務妨害に当たります。


しかし、コンプライアンス違反が存在したとしても、それでもなお、ばいきんまんはアンパンマンに対して優位であるのは変わらないはずなのです。ではなぜ、ばいきんまんは敗れるのか。

わたしはそこに「個とコミュニティの戦い」という視点を置きたいと思います。


▼アンパンマンがもつ「コミュニティ」という強み

アンパンマンのふだんの仕事は主に2つです。すなわち「お腹をすかせた人がいないかのパトロール」及び「パン工場のパン配達」です。アンパンマンは町中に空腹の人を見かけたら自らの顔を差し出し、ジャムおじさんやバタコさんが工場で作るパンを配達する。そこにはジャムおじさん、バタコさんをはじめとしたパン工場を中心として長年培われたコミュニティとしての信頼、そしてそれをもとに形成された協力体制が存在しているのです。

思い起こしてみれば、アンパンマン側の協力体制は非常に強固です。ジャムおじさんはアンパンマン号を操縦することでアンパンマンの後方支援を行い、バタコさんやチーズは力が出なくなったアンパンマンに向かって「新しい顔」を百発百中の精度で届けます。ばいきんまんが強力なロボットで応戦してきた際には、旧知の仲のカレーパンマンやしょくぱんまんと共に「ダブルパンチ」「トリプルパンチ」を用いてばいきんまんを撃退しているのです。

一方でばいきんまんは「個」での戦いを強いられています。ドキンちゃんがサポート役として入ることもままありますが、ドキンちゃんは大好きなしょくぱんまんに危害が及ぶようなことは行いませんので、フルサポートを行うというわけではありません。ばいきんまんは、自らのコンプライアンス違反によって周囲の信頼を失い、結果として「個」で戦わざるを得なくなっている――そう考えることもできるのです。


そしてこの構図は、わたしたちが従事する建設業にも当てはまると考えます。


▼建設業におけるコンプライアンス

アンパンマンが日々の生活のなかで築いてきたコンプライアンス的な正しさをもとにした「信頼」は、建設業においては「法令順守」「安全管理」「下請関係」「行政対応」などの用語に置き換えて考えることができます。

ともすれば「安全書類めんどくさいな~」だとか「マニフェスト発行しなきゃならないのやだな~」など法律を無視した行動というのは、超短期的視点で見ればばいきんまんの戦いにある通り、有利であるのかもしれません。「従業員教育やっとれんな~」という嘆きも、「KY(危険予知)活動の書類だるすぎる」というボヤキも、そりゃみんな手がかかることなんて忌避したいのですよね。

しかしこれらを日々行うことで形成される「地域の信頼感や安心感」、さらには事業を継続していくうえで必須の「行政による許可」無形の資産となり、ときに有形の資産のみによる力を凌駕します。正しいことを正しく行う」ことは、単一の行為としては何も意味を持たないように思えるかもしれません。しかしそれを積み重ねることでいつしか「集団としての強さ」へと転化するのです。経済学で言う「悪貨は良貨を駆逐する」の格言は、ここでは当てはまらないと断言します。

その意味で「コンプライアンス」は、共同体に接続するための必要なコストなのだとも言えます。


▼ばいきんまんはどうすればアンパンマンに勝てるのか

最後に、ばいきんまんが勝つための方策を書いておきます。

ずばり「ホワイト企業化すること」。

たとえば、ばいきんまんの作るメカやセキュリティシステムは、アンパンマンのパンチを受けても即座には壊れない耐久性を持っています。この技術を町に提供し、「ばいきんまん式・絶対防犯ドーム」などを建設すれば、事件そのものが起きなくなり、アンパンマンがパトロールを行う必要がなくなります。

また、アンパンマンの存在意義は「お腹が空いた人に顔を分ける」ことですが、ばいきんまんがその技術力で「アンパンよりも栄養価が高く、保存性の高い完全食」を開発・無料配布すれば、アンパンマンの出番はなくなります。

ばいきんまんは、自らの知識・技術力を正しい方向で用い、ジャムおじさんのパン工場を旧世代のインフラとして駆逐することで圧倒的な勝利を収めることが可能なのです。




……子どもは泣くけど。

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