一人称アイデンティティ

日本語は習得が難しい言語です。

使われる文字はひらがな、カタカナ、漢字のおおむね3種類で、アルファベットも含めて1つの文中に4種類が用いられることもよくあります。

漢字の読み方ひとつ取っても1種類に統一されていることはまれで、多くの漢字は複数の読み方があり、それを日本語話者は無意識のうちに使い分けています。加えて動詞や形容詞が複雑に活用します。

弊社の外国人従業員もいろいろな文章を読んだり書いたり、日々生活のなかで実際に話すことで、苦労しながら日本語を学んでいます。


そんな日本語。「一人称」の表現も多種多様です。英語だったら「I」と言えばいいところですが、日本語の場合は話者の立場、アイデンティティ、話す相手、さらには地域によってさまざまに変化するのは皆様ご承知のとおりだと思います。


たとえば。


★私/わたし/わたくし

日本語においてもっとも一般的な、話者の性別を問わない一人称の表現です。ビジネスの場ではもっとも無難、なおかつ改まったイメージをまとった表現であると言えるでしょう。個人的にもよく使いますが、文章表現においては、これを書いている拙者は柔らかいイメージを与えたくて「私」よりも「わたし」を使うことが多いでござる。


★あたし

「わたし」の変化形。主に女性が用いるように思われます。拙者個人的には椎名林檎の歌の歌詞に登場したことに鮮烈な印象を受けました。


★あたい

「あたし」のさらなる変化形。女性のなかでもお調子者だったりやさぐれだったりな女性が使う印象です。中島みゆきの一人称として用いられていることでもまあ有名。


★あちき

もともとは江戸吉原の遊女が用いた表現ということで「あたい」よりもさらに崩した印象、ちゃきちゃきの下町的表現感があります。


★アテクシ

「あたし」と「わたくし」を悪魔合体させた、なんちゃって高貴感だとかキザな雰囲気を多分に感じさせる女性一人称で、東京都知事・小池百合子氏の一人称として(としてネタにされることで)定着している言葉です。拙者も文章語ではたまに使うでござるよ。

★僕/ぼく/ボク

男性が主に用いる一人称で、幼稚園のキッズから大人まで広く用いられる話し言葉特有の一人称表現と言えます。「私/わたし」と比較すると若干の未成熟感イメージがあり、それを狙って用いることも多々ある表現です。派生形で「僕ちゃん」「ボクちん」とかもありますが、拙者、ここまで来るとこのチキン野郎と思うでござる。

蛇足ながらポピュラー音楽の歌詞ににおける「僕」の使い手としては、この人をおいて他にはないでしょう。マッキー!





★俺/おれ/オレ

前述の「僕」に比べて自分を前面に出したい希望が含まれた男性の一人称。それゆえビジネスの場でこれを用いるのはさすがになあ、と思われます。とはいえ建設業の社長さん同士のざっくばらんな会話のなかでは多用される表現です。


★ワシ/儂

ご年配の男性であるか、会社だとかの組織内の頂点付近に位置する男性が用いる一人称表現で、ご年配の方が用いる分には「ああ、お年寄り特有の表現ですね」と思われる一方で、組織内の頂点付近の方が用いると周囲にそこはかとない威圧感を与える表現です。こんな感じに。

   ____
    /__.))ノヽ
    .|ミ.l _  ._ i.)
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ 大谷翔平はわしが育てた!
   .しi   r、_) |
     |  `ニニ' /
    ノ `ー―i


……そうだね、そう思うよ。


★自分

男性、とくに軍隊的なマッチョ男性のイメージがありますが、日本人的にいちばん有名なのは高倉健の「自分、不器用ですから」ではないかと思われます。否応なく醸し出される漢のエキスそして無骨感!想像するにこれが「ボク、不器用ですから」だとか「アテクシ、不器用ですから」だったらイメージぶち壊しです。


★オラ

「オッス、オラ悟空!」「おら東京さ行くだ」 たった2文字で田舎感を出せる表現は貴重。田舎者であることを自称する人は地方在住者のなかでもごくごく少数と考えると、今や天然記念物的表現なのかもしれません。


★オイラ/おいら

かつてはビートたけしの一人称として有名でしたが、現在では西村博之(ひろゆき)氏の一人称というほうが通りがいいでしょうね。なお拙者としては一番嫌いな四字熟語が「西村博之」、一番好きな四字熟語が「本田姉妹」ですので、そこんとこ夜露死苦でござる。


★おいどん

九・州・男・児!

拙者、これぞ日本文化と思うでござる。


★小生/拙者

これを用いる男性はひねくれ特級呪物なので、淑女の皆様におかれまして注意しましょう!

なお個人的には『東京●ポーツ』あたりの成人向けページに載っている風●ルポの文章での使用例が印象深いです。



最後の方は駆け足になってしまいましたが、日本人の99.9%が用いる一人称表現はこれで網羅しているのではないでしょうか(小生とか拙者とかおいどんには会ったことねえ)。

しかし、建設業のシャチョサン、とくに昔やんちゃだった方が大人になって、地場的な建設会社の社長として地域貢献に尽力されている場合、もっぱらこれ以外の一人称が用いられることが多いようです。

それがこれだ!


★ワイ

この一人称の話者は社内向け/社外向けにかなり無理目な難題を投げてくることもありますが、根は優しくて面倒見がよく男気溢れております(ということにしておく)。




わらわは「朕」を使う人に会ってみたいでおじゃるよ!


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